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朗読コンテスト

この朗読コンテストは、日本語センターが、NHK話しことば通信添削講座「最新朗読」の受講者を対象に、毎年2回行っています。

第67回 朗読コンテスト

 

第67回朗読コンテスト受賞者決まる。大賞、優秀賞受賞者の朗読をホームページでご紹介。

通信添削「最新朗読」 2020年後期、第67回朗読コンテストの受賞者が決まりました。

大賞・銀 1人、優秀賞 6人、優良賞 14人、奨励賞 16人です。受賞されたみなさま、おめでとうございます。

大賞、優秀賞のみなさんの朗読の一部を、受賞のコメントとともに、日本語センターのホームページでご紹介しています。どうぞお聴きください。また、今期の選考委員長、岩井正・日本語センター専門委員の講評も掲載しています。こちらもどうぞご覧ください。

第67回 朗読コンテスト結果(五十音順、敬称略)

大賞・銀賞 1名

  • 森 祐子(岩手県)

優秀賞 6名

  • 小貫 征子(北海道)
  • 加持 喜一郎(茨城県)
  • 後藤 美佐枝(宮城県)
  • 坂田 恵美子(和歌山県)
  • 西山 基子(和歌山県)
  • 半田 和世(静岡県)

優良賞 14名

  • 赤星 幸子(和歌山県)
  • 太田 愛子(福岡県)
  • 太田 喜美子(和歌山県)
  • 齊藤 淳子(滋賀県)
  • 清水 栄子(埼玉県)
  • 菅井 紀子(大阪府)
  • 鈴木 一夫(愛知県)
  • 中西 由美子(和歌山県)
  • 西田 治子(北海道)
  • 野坂 昌子(福井県)
  • 林 栄子(北海道)
  • 三木 三恵子(兵庫県)
  • 三宅 佳代子(岡山県)
  • 山本 美鈴(福島県)

奨励賞 16名

  • 荒木 美鈴(岐阜県)
  • 井上 登志子(東京都)
  • 河野 久美子(千葉県)
  • 齊藤 雅美(東京都)
  • 笹原 紀子(広島県)
  • 田口 喜代子(山梨県)
  • 椿  尚也(東京都)
  • 中澤 あゆみ(北海道)
  • 中島 由美(東京都)
  • 中村 千代子(長野県)
  • 名取 智子(東京都)
  • 西下 和子(和歌山県)
  • 松川 幸子(新潟県)
  • 山口 千枝子(茨城県)
  • 若林 哲幸(山口県)
  • 渡邉 努(大阪府)

第67回朗読コンテスト 受賞者の朗読

受賞者の朗読

*写真をクリックすると音声の一部をお聞きになれます
大賞・銀賞

森 祐子さん(岩手県)

ふわりとした息づかいで読みたい、年齢的に
時間はないけどゆっくり学び続けます。

優秀賞

小貫 征子さん(北海道)

美術館で自画像を見上げている作者になった
つもりで、声に出しました。

加持 喜一郎さん(茨城県)

九十四歳での二回目の受賞は、正直嬉しい。
まだ進歩するという証しでもあるから。

後藤 美佐枝さん(宮城県)

絵画を鑑賞する時の目の動きを考え、
間を意識しました。

坂田 恵美子さん(和歌山県)

熱心な仲間との学び、様々な文学作品との
出会いは大きな楽しみとなっています。

西山 基子さん(和歌山県)

ゴヤの自画像について講義をしている先生に
なったつもりで、取り組みました。

半田 和世さん(静岡県)

月に一度「半田さんこんにちは」で始まる
テープが届くのを、待っています。

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※「第67回 最新朗読コンテストCD」及び過去の朗読コンテストCD(第58回~66回)をご希望の方は、「NHK放送研修センター」03-3415-7121)までお電話ください。

選考を終えて

選考委員長(後期) 岩井 正

堀田善衞の「ゴヤ」は全四巻の長編の評伝です。年代ごとにゴヤの足跡を追いながら、各巻の最終項を「自画像」と題して、それぞれの時代のゴヤをまとめています。彼は生涯の重要な時期にきまって自画像を残しており、著者は「ゴヤの真の伝記」とは、約10枚のこっている自画像に他ならないとも記しています。

作品を通してゴヤに対する著者のスタンスは、「共感と、冷静な観察」と言えますが、自画像に関してはとりわけ興味深い視点を提示しています。この時代の画家は注文を受けて対象を描いており絵には注文者への「迎合や制限」がある程度あったのですが、自画像は別で「自由に、自在に、自らそうあってほしいと思う自分」を描いているというのです。また別のコメントでは、自画像は鏡によって自分自身を眺めて描いているわけで、「彼が彼自身を眺めるとは、すなわち彼が彼の内部を眺めているということである」「いま自身のなかで何が起こっているのか、何が起ころうとしているのか・・・ゴヤはそれを彼自身に問いかけようとしている」のだと指摘しています。
ゴヤの有名な言葉があります。フランス亡命中、80歳の時にデッサンの詞書として残した「Aún aprendo(アウン・アプレンド)」(おれはまだ学ぶぞ!)です。ゴヤの一生を貫いたものとして、堀田さんも解説でしばしば引用し大長編も、このことばに触れて締めくくっています。

さて、今回の課題文を読む上で最も大事なのは「69歳のゴヤの自画像が、話している堀田さんの眼の前に今、そこにあるように聞こえるかどうか」です。評価の基準の第一です。前述したように自画像は、ゴヤの「自分自身を知ろうとするまなざしであり、そうあってほしいという思い」なのです。そうとらえている著者の文章は、単なる見かけ上の顔のパーツの紹介や説明ではないのは当然です。課題文の直前にはこの自画像の印象について、大激動期の様々な圧迫に対する「開き直り」を感じたと記していますが、ゴヤは謎に満ちた人物です。著者は自画像を細かく見つめて、この時代のゴヤ自身になおも迫ろうとしています。同じ顔の描写でも、課題文の後半に行くに従って想いが深まって行くのが読み取れます。朗読によってこの緊張感が伝わるかどうか、「発見」・「驚き」が伝わるかがポイントです。それがテキストの解説にあった「この自画像を見て見たい」と思ってもらえるような朗読です。自画像について著者がまとめたものを、ただ紹介しているだけの読みではいけません。
美術作品を声だけで説明し、魅力を感じてもらうということで思い出したのは日本語センター朗読講師で先輩の斎藤季夫さんが、15年ほど前に担当したNHKラジオ深夜便の「絵を語る」というコーナーです。美術品の魅力をインタビューで伝える内容です。斎藤さんの話では、作品の見た目をことばで語ること以上に、見えないもの・見えていないものにどれだけインタビュアーがこだわるか、そしてそれを分かり易く聴き手に伝えるかが大事だったということです。

そうして基本の構えが決まったら、後はそれをどう表現するかです。まずは、急がないことです。「聴き手が受け取り易い」話し方が出来ているか。朗読の原点です。その意味では、ほかの作品のようにスラスラと滑らかに読むこととは別の話し方が必要です。端的に言えば、聴いている人の「うなずき」が感じられる話し方か、どうかです。自分だけが気持ち良く読んでいる読み方からは離れましょう。それらを支えるのが、朗読の基本技術です。フレーズ(意味句)ごとに内容をまとめて、どんな息にするかをあらかじめ考えた上で話す、いわゆる「フレージング」が出来ているか、息を上に出し、聴く人に届けようとしているか。緩急の仕分けが適切か。自然に話しているように聴こえるかが大事です。自画像を今、目の前にして語るという意味では、「現在進行形」の表現を使うと効果的なところもあります。
語り手である著者が語る地の文は、基本的に三つの要素で組み立てられています。①見えているものの描写、②それを補完する説明や解説、③そして著者の思いや感想です。これらの息の仕分けが出来ているかも大切です。短く一行で言い切っているフレーズにも注目しましょう。著者が、大事なことを表現するときに好んで使う文体です。これこそ、絵を前にした著者の率直な感想として印象的に伝えたいですね。

今回コンテストにもたくさんの方に応募して頂きました。ありがとうございました。今と異なって19世紀初頭の80歳は大変な高齢でした。その時のゴヤのことば、「おれはまだ学ぶぞ!」は、審査をさせて戴いた私を激励してくれます。皆さまにも、このことばが支えになりますように、と願っています。