2022年度事業計画

基本方針

節目の年

2021年度からのNHK経営計画に「財団については2023年度の統合に向けて検討を進める」と明記されました。社会貢献事業の強化、そして経営の効率化がその目的です。2022年1月にはNHK放送研修センターを含めた4つの一般財団法人と、公益財団法人のNHK交響楽団の5つの財団の間で、財団統合に関する 「基本合意書」が交わされました。NHK放送研修センターは設立以来37年に渡り、一般財団法人としての歴史を重ねてきましたが、2022年度はその歴史に一つの区切りをつける年となります。
財団統合への対応をひとつの柱としながら、人財の育成と放送文化の向上に向けた歩みを着実に進めます。

公共メディアプロ人財の育成

NHKグループにおける当財団の役割や使命は、財団統合を来年に控えた2022年度においても変わることはありません。公共メディアプロ人財の育成は当財団の基幹業務のひとつです。NHKではいま、新しいNHKらしさを追求するために様々な改革を進めています。そのひとつ「人事制度改革」は、当財団の人財育成事業 と密接不可分な改革であり、柔軟かつ的確に対応する必要があります。経営マネジメント人財の選抜・育成や複線的なキャリア選択を支援するプログラムの開発など、当財団には新たな研修内容や運営手法が求められています。オンライン研修の安定化、高度化といった研修スタイルをさらに確かなものとし、NHKの人事制度改革の実現に貢献します。

社会への還元

展開事業も当財団の一翼を担う事業です。設立以来、当財団は放送界の人財育成事業やことばコミュニケーション事業を通じ、放送文化の向上と社会の発展に努めてきました。受託事業で培ったスキルとノウハウを広く社会に還元し、価値を提供し続けてきました。2022年度も民間放送局やケーブルテレビ局、国際協力機構(JICA)から委託される海外の放送局向け研修など、放送界全体の人財育成に積極的に取り組みます。アナウンサーのスキルとノウハウを生かしたことばコミュニケーション事業を通じ、社会のニーズにも広く、的確に応えていきます。

財団改革の推進

一方、2022年度は当財団の自律的な改革を実現させる年でもあります。収支構造の適正化はその本丸です。当財団の3か年計画にも「収支構造の適正化を図ることで、持続可能な強靭な経営基盤を創っていきます」と明記しましたが、業務を効率的 に運営し、コスト意識を徹底することで、財務体質をさらに確かなものとしていく必要があります。NHKを取り巻く環境が厳しさを増し、NHKからの委託による収入の増加は見込めません。新型コロナウイルスの感染の再拡大も予断を許さない状況です。公益目的支出の適正な管理とバランスの取れた収支構造の構築に全力で取り組みます。
財団機能の最適化にも取り組みます。その一つが体制の再構築です。研修事業部と日本語センターを新たにNHK事業グループと展開事業グループに再編成します。NHK事業グループは公共メディアプロ人財の育成、展開事業グループは社会貢献事業による価値の提供を目指します。また、他財団と共通のインフラはもちろんのこと、財団独自のインフラも整備します。ITインフラを活用した多様な働き方の推進、効率的な業務体制の構築、そして職場環境の整備は重点施策の一つです。

統合に向けた準備

最後に財団統合に向けた取り組みです。統合の主たる目的である社会貢献事業の強化は、当財団としても、他財団との連携でいわゆるシナジー効果を生み出し、社会貢献領域の幅を拡げていく必要があります。2022年度は他財団との連携事業に道筋をつけ、社会貢献事業へのシフトを本格化させる一年と位置付けます。改革を推し進め、NHKグループの財団として相応しい姿に整えつつ、統合という新たな歴史に備えます。


事業運営計画

Ⅰ 「新しいNHKらしさ」の実現に向けた支援~人財育成と放送支援

1 公共メディアプロ人財の育成

2023年度の財団統合後、新財団は社会貢献事業に大きく舵を切っていきます。その中でも、引き続きNHK職員研修の受託はNHK放送研修センター事業の財源の軸となります。2022年度は、その適正な事業規模を確保して行くため、 先取りして事業計画を策定していきます。NHK職員向け研修では、人事制度改革に伴う研修の見直しを図りつつ、NHK放送研修センターで受託する適正な事業規模として、約7億2,000万円の受託を基本とし、年度途中での追加研修も考慮して行きます。
また、NHK関連団体向け研修、NHK出演者・スタッフ向け研修についても、NHK放送研修センターの財務状況の改善を図るため、関連団体各社や関連事業局および本体関連部局と緊密に連携し、従来の直接費ベースの経費見積りを抜本的に見直し、間接経費・販管費等も考慮した真のトータルコスト管理で適正な収支管理を図って行きます。事業収入規模は、2,300万円程度を見込んでいます。


(1)職員研修

NHKの経営計画の達成に向けて、人事局が策定した「人財育成基本方針」のもと、NHKで働く一人ひとりが、かけがえのない「公共メディアプロ人財」となる育成を目指します。地域や社会に貢献し、ともに成長していくための具体的 な研修を人事局と連携して企画・運営し、「新しいNHKらしさ」の実現に向けた人財育成を推進していきます。
具体的には、昨年度研修の対象や提供するスキルを明確にするため、研修区分の見直しを行いました。今年度は、職員制度改定に伴う職員体系の見直しにも対応し、更に受講対象者にとって分かりやすい研修区分・メニューの再構成を図り、受講対象者を明確にし、適正な規模で、より研修のねらいに見合ったカリキュラム、講師選定を行い、効果的かつ効率的に実施していきます。
個々の研修については、この2年間のコロナ禍での研修実施の実績を踏まえ、基本的にオンライン研修を中心に実施していきます。しかし、人財交流や実習等が必須な研修については、感染状況を充分見極め、適切な感染防止策を徹底しな がら、集合型での実施も行っていきます。
また、昨年度に引き続き、eラーニングやオンライン研修の収録映像をもとにした動画講義も最大限活用し、より多角的な研修スタイルを開発するとともに、自発的な学びの機会の提供にも取り組んでいきます。


(2)関連団体向け研修

NHK関連団体向けの研修は、新採用者や管理職層など階層別の研修を中心にNHKグループ全体の総合力の強化を図るとともに、グループ意識の醸成、コンプライアンス意識の向上を目的に実施します。
管理職層向け研修については、昨年度実施した関連団体各社へのアンケートの意向を反映させ、「リーダー層」、「新管理職」、「中堅管理職」、「幹部・ポスト長」のオンライン研修に再構成します。各層に求められる役割・責任等を担うために 必要な知見を習得するとともに、実践的なグループワーク等も活用して、充実を図っていきます。
NHKテクノロジーズから委託され、この数年実施している新人向け、昇格者向けの研修も継続実施します。他の関連団体についても、要望に応じた個別の研修を積極的に開発し、受託していきます。
また、今年度からは、各関連団体窓口との連携を強化し、早期からコンタクトを取り、研修受講者数の拡大を図るとともに、関係各所の理解も得て、受講料の改定を含め、適正な収支改善を行っていきます。


(3)NHK出演者・スタッフ向け研修

NHKの各放送局では、地域番組や企画ニュースの制作に多くのスタッフが関わっています。こうした放送現場を支える全国のスタッフを対象に、番組制作に関する「入門」「初級」の二つの研修を、実習を伴う集合型で実施します。新型コ ロナウイルスの感染拡大のため、この2年間は実施できませんでしたが、今年度は映像設備の更新で機能性などが改善された「HDスタジオ」もフル活用して、実践的なスタッフ育成に貢献して行きます。
また、NHKの各放送局では多くの外部出演者(キャスター・リポーター)が放送を担当しています。こうした放送現場を支える外部出演者を対象に、実習を伴うセミナーを実施します。NHKの出演者として必要とされるスキルや 知識、生放送の危機管理、コンプライアンスに関するセミナーを開催し、公共メディアとしての質の向上に貢献します。


2 高度な「アナウンススキル」を生かした多様で質の高い放送支援

NHKの番組や様々なコンテンツ、関連する業務を通じてアナウンサーの専門性を発揮し、放送を支える役割を果たし、さまざまな形で、放送・メディア、地域の発展に寄与します。アナウンス室委託業務の事業収入規模は2億2,000 万円程度、その他の事業で5,600万円程度を見込んでいます。


(1)アナウンス室委託業務

放送やイベントを通じた、豊かな「話しことば」の普及を通じた社会貢献を目指し、NHKのテレビ、ラジオのアナウンス業務や支援業務を受託します。
主な担当番組は、経験豊富なアナウンサーが全国のリスナーに語りかける「ラジオ深夜便」や、日本全国の地域の魅力を紹介する「小さな旅」などです。2022年度は、新たにラジオ番組の新コーナーを担当し、話しことばでいきいきし た会話がはずむヒントを提供するなど、アナウンサーとして蓄積した技術を生かし、放送番組を通して地域の情報発信強化や放送文化の発展に貢献していきます。
また、災害時に取るべき行動や心構えについて紹介する「安心ラジオ」のキャスターを平日のラジオニュースの担当者が引き続き務めます。いつも聴き慣れた信頼される声で放送を通じて防災意識の向上に寄与していきます。さらに2022 年度は、新たに、放送以外でも、アナウンス室が推進している「メディアリテラシー教室」や「防災教育セミナー」など幅広い世代を対象にした社会貢献事業に、放送現場での経験を生かして積極的に取り組んでいきます。


(2)ユニバーサル放送

字幕放送と解説放送を引き続き担当し、子供からお年寄り、障害のある方などすべての人が安心して視聴できる「ユニバーサル放送」に寄与します。字幕放送は、実況アナウンサーや解説者、出演者が話した内容を瞬時に「リスピーク」し、その内容をテレビ画面に字幕として表示するもので、大相撲などスポーツ番組を中心に対応しています。耳の不自由な人たちだけでなく、高齢者からも好評を得ています。
解説放送では、目の不自由な方がテレビを楽しめるよう画面に映る動きを副音声で解説します。
こうしたユニバーサル放送を通じて、障害のあるなし、年齢などに関わりなく、多様な価値を持った人が共に生きる社会の実現に貢献していきます。


(3)コミュニケーション展開(NHKグループ向け)

NHKや関連団体が取り組む事業について、質の高い音声表現で研修の講師やイベント進行などを務め、NHKの放送番組や地域放送局の運営に貢献します。
NHKの教育系のサイトである「NHK for school」を利用した効果的な学習を周知するため、「NHK for school」の有効な活用方法や関心の高いコンテンツなどを紹介するプレゼンターを通じて、学校教育に貢献します。また、海外に在住する日本人の方へ、安定したアナウンスで「海外安全情報」をお伝えする業務を担います。

Ⅱ 「スキルとノウハウ」を社会へ還元

長年NHKの現場を通じて培ってきた「放送制作」「放送技術」「アナウンス」等のスキルや知見を広く遍く社会に還元し、日本の放送・メディア業界の未来を支えるとともに、話しことばで伝える技術に基づくコミュニケーション力の向上等を通 じた社会貢献を推進します。


1 放送界の人財育成による社会貢献事業

2023年度の財団統合を視野に入れ、より社会貢献事業としての役割を強化していく事業展開を目指して取り組んで行きます。民間放送局向け、海外放送局向け、ケーブルテレビ局向け等各種研修・セミナーの収支構造を改善し、公益目的支 出を適正に抑える年間管理の基で事業計画を実施していきます。
オンライン研修を中心としますが、放送メディア界の動きやニーズを適切に捉え、受講者のスキル向上につながる新規事業の開発も図っていきます。 事業収入規模は5,800万円程度を見込んでいます。


(1)民間放送局向け研修

民間放送局向けに、番組制作や技術関係の知識・技能習得を目的に毎年実習やグループ討議を伴った様々な研修を実施しています。しかし、コロナ禍の影響で昨年度は限定的な実施となりました。
2022年度は、この2年間の実績を踏まえてオンラインでの実施を中心に、実習をメインとする集合型の研修・セミナーも新型コロナウィルスの感染状況を見ながら実施していきます。
まず、日本民間放送連盟(民放連)からの要請に応えて長年実施している2つの研修を実施します。
1つは、NHKと民放連の共催で、2003年から実施している「放送人基礎研修」です。昨年度に引き続きオンラインで実施します。入社3年目までの若手社員が組織や職種を越えて放送倫理を学ぶ研修で、民放各社、NHKの報道や番組の取材・制作者、報道によって被害を受けた方の話を聞き、報道の使命や役割、そして真実に迫ることの意味について討議を交えて考えます。
もう1つは、技術関係の研修「テレビ技術研修会」です。民放連からの委託 を受け、若手技術者を対象にした研修で1957年から60年以上にわたって続いています。放送技術の基礎およびデジタル応用技術の習得を目的に、感染状況を見極めながら、集合またはオンラインで実施します。
また、コロナ禍ではオンラインで実施していた「テレビ技術基礎セミナー(初級編)」を2022年度は集合研修に戻し実施します。合わせて、テレビ信号や映像・音声技術等テレビ技術の基礎となる8つの講義を動画収録し、動画配信する 新しいスタイルのセミナー「テレビ技術基礎 講義動画配信コース」を開始します。ウィズコロナ時代に場所や時間に拘束されず、自主的に本人のスキルに応じて放送技術の基礎を学ぶことができる汎用性の高い育成教材として開拓し、受講者の利便性を追求していきます。
このほか、オンラインとの親和性が高い「カラーグレーディング研修」や放送界で取得が求められる「第1級陸上無線技術士国家試験直前対策オンラインセミナー」(国家試験実施時期に合わせ年2回実施)、音声技術、照明技術、送信技術、 ネットワーク・IPなど放送技術に関する普遍的な基礎技術セミナーをオンライン中心に実施します。


(2)海外放送局向け研修

途上国の放送局向けに実施している研修は、国際協力機構(JICA)の委託を受けたもので、NHKが行っていた時代を含めて60年以上の歴史があります。
今年度も昨年度に続き「地上デジタルテレビ放送政策・技術」と「デジタル放送の番組制作」の2つの研修を各国のJICA事務所とオンラインで結んで実施します。
「地上デジタルテレビ放送政策・技術」研修では、各国で放送のデジタル化計画に携わる放送行政や放送局の技術者および幹部を対象として実施します。研修では、日本のアナログ停波のプロセスからデジタル放送の概要とサービスの特徴、 デジタル技術理論などの講義を通じてデジタル放送技術への対応力向上を図ります。
「デジタル放送の番組制作」研修では、各国放送局のディレクター、プロデューサーを対象に、デジタル技術を使った番組制作の実際を学びます。近年、受講国の関心・要望が、インターネットとの連動や国際共同制作などに推移してき たことを受けて、今年度は日本方式のISDB-T以外の国にも対象を広げ、アジア、アフリカ、中南米を中心に、国営あるいは公共放送、大手民間放送局などの番組制作者、および放送行政に関わる官僚も対象に参加国を募る予定になっています。


(3)ケーブルテレビ局向け研修

NHKが「訪問によらない営業活動」を推進する中で、NHKとケーブルテレビ局との関係はより重要になってきています。日本ケーブルテレビ連盟、日本CATV技術協会と連携して、地域密着の情報拠点として社会貢献を担う全国の ケーブルテレビ局の人財育成を後押しする各種研修を実施します。
2011年の東日本大震災を契機に、ケーブルテレビが緊急時や災害時に行政からの防災や生活支援などの情報、独自の生活情報を伝えるケースが増え、地域におけるケーブルテレビの役割が格段に高まっています。ここ数年かつてな い規模の風水害が全国各地で発生しているなかで、災害時の対応を学ぶ「ケーブルテレビの緊急災害放送」を2022年度もオンラインで実施します。
番組制作に関連した研修では、「一人5役」を集合型とオンラインで実施します。番組の企画・撮影から編集・原稿までのいくつもの役割をひとつの研修で学ぶもので、集合形式では、グループワークによる実践的な実習を中心としますが、 人数を絞り、実習での人と人との接触機会を減らすなど新型コロナウィルス感染防止策を取りながら実施します。オンラインでは、遠隔地からの上京が難しい方や番組制作に携わって間もない方などを対象に、基礎的な知識・技能の習得を目指して実施します。
技術関係の研修では、ケーブルテレビの伝送技術として重要になるFTTH伝送に関するセミナーを新人層向け、初級者向けに分けて実施します。また、受信相談など視聴者の様々な問合せに的確に対応する手法を学ぶ「ケーブルテレ ビお客様対応力強化セミナー」など集合型を中心に実施する予定です。
アナウンサー向けの研修では、情報を正確にわかりやすく伝えるノウハウを学ぶセミナーを通じて、全国で頻発している自然災害発生時の緊急対応や地域スポーツの実況など、ケーブルテレビ各局の要望に沿ったカリキュラムで実践 的な研修を実施します。
さらに、NHKや日本ケーブルテレビ連盟の地方支部、各県のケーブルテレビ協議会と連携し、番組制作や災害時の放送対応等についての知識や手法を学ぶ「NHKケーブルテレビ総合セミナー」を実施します。NHK本体の関連部局と も協力し、各地域の要望に沿った様々なカリキュラムを用意し、各地域に出向いてやオンラインでの対応を含め、全国6か所程度で開催する計画です。


(4)制作プロダクション向け研修

NHK放送研修センターが社会貢献として、民間放送局、海外放送局、ケーブルテレビ局の人財育成を強力に支援するためには、そのコンテンツ制作に大きく携わる制作プロダクションの人財育成は欠かせません。
今年度も、全国放送派遣協会に加盟する制作プロダクション向けに、新人層を対象にした研修を例年通り集合型で計画します。放送の世界で働くうえでの基礎的な知識や技能を学ぶ研修で、番組制作系の「TV制作基礎コース(演出)研修」 と技術系の「TV制作基礎コース(技術)研修」の2つのコースがあります。一昨年度、昨年度は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で実施できませんでしたが、感染状況を充分見極めながら、開催する計画です。


2 「アナウンサーのことば表現力」による社会貢献、普及事業

ことばで正確に情報を伝える力や豊かな表現力は、複雑な社会を支える基盤と もいえるものです。新型コロナウイルスの感染拡大で新しい生活様式の実践が求 められる中で「話して相手にしっかり伝える」コミュニケーションスキルの重要 性が一層増しています。社会人のリカレント教育(学び直し)の動きも盛んで す。また、キャリアアップを視野に自己啓発に意欲的なビジネスパーソンも増え ています。
一方、現在のコロナ禍やリモートワークなど働き方が大きく変化している中、こ れまで取り組んできた個人に向けて募集していた対面型の講座やセミナーは、需 要が右肩下がりになっているというのも現実です。そこで、2022年度は、社会 の大きな変化に迅速に対応し、持続可能な事業としうるために、これまでのBtoC 事業(個人向け)から、BtoB事業(グループや企業・団体向け)に大きく軸足を 移して、社会貢献事業としての新たな活路を見出す年にしていきます。事業規模は 8,800万円程度を見込んでいます。


(1)企業・団体等向け

「BtoB」転換のメイン事業が、「企業・団体向けことば研修」です。企業・団 体などからの要請に応えて、長年培ってきた「わかりやすく伝えるノウハウ」を 活かし様々なコミュニケーション力向上研修の拡大に力を入れます。新入社員か ら経営幹部までの幅広い受講者を対象に、ビジネスの現場で求められる明快な 「トーク力」、「プレゼンテーション力」、「傾聴・質問力」などの講座を用意し、 依頼する側の要望に応じてカスタマイズしたメニューを提供します。リモート ワークが普及する中でオンラインの特性を踏まえた効果的な伝え方、経営層に 必須とされるメディア対応研修など、時代の要請に応えた研修カリキュラムの開 発に力を入れ、社会で働く人々のビジネスコミュニケーション力の向上に貢 献します。
また、2022年度は、NHK営業と連携して、企業の最前線で働くビジネスパースンを対象に、コミュニケーション力を高める研修を行い、説得力のあるプレゼンテーション技術や適切な敬語の使い方などを伝える事業を開発していき ます。アナウンサーの経験やことばに関する知識を生かして「伝わる表現」のノ ウハウを社会還元するとともに、こうした機会を通じてNHKや番組についての 理解促進にも貢献します。
長年、放送の現場で培ってきた「難しいことをわかりやすく伝える力」、「情報 を整理して伝える力」、「身振りや表情などを含むことば以外の表現力」などのノ ウハウを論理的に指導できる強みを生かし、様々な業種や企業・団体等のご要望 に応じて柔軟にカスタマイズしたカリキュラムを提供し、研修効果を高めていき ます。


【研修例】
○鉄道会社 「車内アナウンス研修」「新人研修」 
○メーカー「プレゼンテーション研修」「敬語・ことばのマナー研修」「傾聴力」
○金融機関 「経営幹部スピーチコーチング」
○地方自治体「住民向け説明力向上研修」「メディア対応研修」

こうした研修の存在を広く知っていただくために、企業団体等に対するPR戦 略に力を入れ周知に努めます。
コロナ禍で例年依頼のあった企業が研修を中止するケースも多くなっていま すが、2022年度はオンライン研修の態勢を強化して研修再開や新規受注を働 きかけていきます。オンラインの強みである、社員・職員を一か所に集めること なく受講できる非接触型であること、出張経費などの負担もなくテレワークの一 環としても取り入れやすいこと、などをアピールして拡大していきます。また個 人受講から企業研修に広がる事例もあることから、お試し受講などに誘い、積極 的に新規開拓に取り組んでいきます。


(2)出張話しことば講師

2022年度、新たに取り組む「出張ことば講師」は、学校や朗読ボランテ ィア団体などから講師の依頼を受けて研修を実施する社会貢献事業です。新型 コロナウイルスの影響が長引く中で、学びたいグループが集まれば研修・セミ ナーを開くことができる利点があります。
学校の先生など教育関係者を対象にしたことばセミナーでは、「話す力」、「プ レゼン実践」などのカリキュラムを通じて、新しい学習指導要領で示された 「主体的・対話的で深い学び」で求められているコミュニケーション力向上に 寄与します。
朗読ボランティアの皆さんに向けた「出張ことば講師」では、「文章を読む」、 「文芸作品を朗読する」技術を直接指導し、ボランティアの音声表現力の向上に 寄与し、公共の福祉サービスに貢献します。「出張型セミナー」と、リモートで実 施する「オンラインセミナー」を提供し、音訳・朗読事業を行う社会福祉協議会、 図書館などの公共団体、ボランティア団体を対象に、講師が会場に出向くセミナ ーと、会場に集まった受講者と講師をオンラインで結ぶセミナーを提供し、受講 者のご希望や会場に合わせて実施します。
「世田谷豊かなことばの世界」は、せたがや文化財団と共催で、ことばの持つ 豊かさを朗読の世界を通して体感していただく講座として 2004 年度から実施し ている事業です。アナウンサーが蓄積してきたことばのノウハウを生かして、楽 しみながら表現力を高めていただくとともに、地域の文化向上に貢献することを 目指します。


(3)大学生向け

大学などで「わかりやすく話して伝える」ことを主眼とした通年授業や集中講 義を受託します。社会人になる前に、敬語の使い方やプレゼンテーション技術、 豊かな表現力を実践的に身につけ、社会人としての基礎力や就職活動に向けたコ ミュニケーション力の強化を図るのがねらいです。単に話し方のノウハウを教えるだけでなく、自分の意見や考えをことばにする力、わかりやすく相手に伝える 力の向上を目指します。
大学での研修事業は、放送やNHKの役割、放送局の具体的な仕事を伝えられ る貴重な機会です。新財団事業について若い世代に関心を持っていただく機会に つながるため積極的に推進していきます。
2021年度は6つの大学で、ことばやコミュニケーションに関する講座を担 当しました。2022年度も同規模を予定しています。


(4)話しことばスクール

2022年度は、これまで「日本語センタースクール」「朗読セミナー」「ビ ジネスセミナー」として個人向けに実施してきた事業を「ことばスクール」に集 約し、「話す・聞く・読む」のノウハウを伝える対面型・オンライン型の講座を 開催します。
アナウンサーを目指す学生を対象にトレーニングを行う「アナウンス講座」、ビ ジネスの場で求められるプレゼンテーションや会話力をみがく「ビジネストーク 講座」、アクティブラーニングに取り組む学校の教職員を支援する「先生向け講 座」、朗読ボランティアや音訳ボランティアの養成を目的にした「朗読・ナレーシ ョン講座」など、受講者の要望に応えた多彩なセミナーを開講します。全国どこ でも同じ内容の講義を受けられるオンラインセミナーの充実も図ります。


(5)話しことば通信添削

「話しことば通信添削」は、インターネットを利用して全国どこでも受講でき る講座で、1985年からこれまでに12万人以上の受講者が学んでいます。コ ロナ禍の中で、人と接触せずに、いつでも好きな場所で学ぶことができる、「新 しい生活様式」にふさわしい受講スタイルが再認識されています。
2022年度も引き続き、パソコンを使って学ぶリモート講座として、厳選し た講座を実施します。生涯学習に取り組む人たちや、ビジネスパーソン、就職活動に取り組む学生など全国の幅広い層や年代にアプローチし、話しことばによる コミュニケーションのノウハウをお伝えします。デジタル化の流れを受けてカセ ットコースは廃止しオンライン方式にご案内します。


(6)コミュニケーション展開(外部向け)

また、様々な要請に応えて話しことばに関する専門知識を社会に役立てていき ます。地域の朗読コンテストの審査員、放送大学の番組キャスターやシンポジウ ムの進行役などアナウンス表現の専門性を発揮し、豊かなことば表現を通じた社 会貢献を推進していきます。


3 財団統合を見据えた他財団との連携事業の開発

財団統合を見据え、各財団の強みを生かしたシナジー効果が期待できる連携事業を検討・開発します。2021年度にはNHKサービスセンターとNHK放送研修センターが連携し、NHKサービスセンターとつながりのある宮城県気仙沼市で、アナウンサーが培ってきた「命を守るための呼びかけ」のノウハウを生かした防災講演会&ワークショップを3月11日に試行しました。ここで得た知見を元に、さらにブラッシュアップして、2022年度は他の自治体への展開を図っていきます。またNHKエンジニアリングシステムが進めているAIによる自動音声作成技術の開発に、NHK放送研修センターが連携。アナウンサーが災害報道の経験を活かし、避難を呼びかける音声データを提供しています。アナウンサーの発話の特徴をAIが学習し、いざという時に緊迫感のある人工音声で避難を呼びかけることが可能となり、今後、実用化を目指していきます。こうした「防災・減災」に寄与できる事業の開発を進めていきます。
このほかNHKサービスセンターが2021年12月に開設したオンラインメディア「ステラ net」と連携し、NHK放送研修センターのアナウンサーが教える伝わりやすい話し方の動画コンテンツの配信事業や、NHKサービスセンターの視聴者センターと連携して全国の地域放送局での視聴者電話対応研修の検討も進めています。
2022年度は、2021年度から開発を進めている連携事業を本格化させ、財 団統合時に向けて社会貢献事業のさらなる強化を進めていきます。

Ⅲ 財団統合に向けたスリムで強靭な業務体制の構築

2023年度の財団統合を見据え、事業部門の組織を再編し、スリムで強靭な業務体制の構築を目指します。新たな体制で、管理会計に基づく事業展開や、営業戦略機能の強化などをさらに推し進め、収支構造の改善を図り、経営基盤を強固にします。また、多様な社会貢献事業を実現するため、他財団との事業連携にも積極的に取り組みます。
新たな働き方の推進が社会的な課題となっています。多様な働き方に資するシステム環境の構築を図るなど、リモートワークや休暇の取得推進につながる施策に取り組みます。
内部統制の強化、コンプライアンスの徹底にも引き続き力を入れていきます。個人情報保護や情報セキュリティの観点も含め、リスクマネジメントや内部監査等によるチェック機能の発揮など必要な仕組み・体制を堅持します。


1 財団統合を見据えた組織再編と統合に伴う諸課題への的確な対応

これまで、「研修事業部」と「日本語センター」の2つの組織に分かれて、それ ぞれがNHK受託・関連業務と展開事業を混在して行っていた業務体制を大きく 見直します。新たに、職員研修を中心にNHKや関連団体から委託や要請を受けた 業務を担う「NHK事業グループ」と、放送界の人財育成や、「ことば」による社 会還元を行うセミナー事業などを実施する「展開事業グループ」の2グループに再 編成し、事業のみえる化・事業目的の明確化を図るとともに、2つのグループが互 いに連携し、効率的に業務を進め、社会貢献事業へシフトしていく体制づくりを整 備します。
「NHK事業グループ」は、「職員研修ユニット」と、NHKの放送支援業務を行う「アナウンス・ユニット」で、「その他会計事業」を担います。また「展開事 業グループ」は、主に、公益目的の「実施事業会計」を担い、「放送界ユニット」 「ことばユニット」で、放送制作や技術、音声表現のノウハウを広く一般に還元す る事業を展開します。収支を管理しながら、最適な要員で一体感を持って事業運営 に当たっていく事で、ここ数年の最大の課題である公益目的支出の適正化を図り ます。
また、新たに「営業戦略チーム」を位置づけ、課題の1つであった「新規事業開 拓」にNHK放送研修センター全体で取り組み、財団統合に向けて新たな独自の収 益源の確保につなげていきます。


2 管理会計導入によるコスト意識の徹底と効率的な業務運営の推進

収支改善に向けたコストの見える化を行うために、展開事業の実施計画書を管 理会計の考え方をベースとした書式に刷新することで、提案時の収支に対する意 識を高めます。
実施計画書と同様に、業務終了後の実施報告書も刷新し、計画との収支差や浮か び上がった課題について分析・検討することで、次の研修に繋げる改善を、随時、 行っていきます。
また、定期的に予算計画上の数値目標と、一定期間の売上・原価・経費・利益実 績を事業区分毎に比較・分析し、誤差がある場合は、その原因を特定し、早期に改 善していくことで、安定した経営の実現に向けたPDCAを回していきます。
さらに、財団統合に向けた経理規程や各種要領の見直しを行う際に、業務のマニ ュアル化を進めることにより、業務の見える化を行い、効率的な業務運営体制を整 備します。
予算管理上、事業区分毎に実際にかかった人件費を把握することは非常に重要 なため、業務量調査は2022年度も継続して実施し、より精緻な予算管理を行い ます。


3 ITインフラ環境の整備による業務改革と働き方改革の推進(設備計画)

ウイズコロナ、アフターコロナの研修スタイルを見据えた設備の検討・整備、 リモートワークなど多様化する働き方や組織再編に即した職場環境の整備、財団 統合に向けたITインフラ環境設備の更新・整備を行います。セキュリティが確保 された仮想プライベートネットワークが構築できるシステムを導入し、外部から NHK放送研修センターイントラへのアクセスを可能とすると共に、電子承認シ ステムも取り入れ、リモートワークなど新しい働き方の推進に寄与していきます。
こうした新しい働き方の推進については、今年度、“勤労休暇取得数年間10日 以上”という目標値を設定し、毎月1回、「働き方改革推進委員会」を開催し、検 証していきます。
また、顧客サービスの向上に向けた施策として、ホームページの刷新による新規 顧客層の開拓と、オンライン決済システムの導入による受講者の利便性の向上に 努めます。口座振替に加え、新たにクレジットカード払い・コンビニ払いなど多様 な決済手段を導入し顧客の要望に応えると共に、11年続いたホームページを全 面リニューアルし、決済方法の複数化に対応したわかりやすいホームページに移 行する事で受講生の拡大を図ります。また、払込書作成・送付、入金確認など事務 処理にかかっていた作業を効率化し、スタッフ費など経費の削減に努めます。


【設備計画の主な取り組み】
分類 計画内容
業務の効率化
職場環境の整備 
電子承認システムの導入
リモートワーク推進のためのシステム整備 
設備更新・充実 ノンリニア映像編集機の更新
オンライン研修汎用機材の充実
光伝送装置の整備
顧客サービスの向上 ホームページの刷新
オンライン決済システムの導入

4 情報セキュリティの強化

ITインフラ環境の整備に伴って、NHK放送研修センター全体で、情報セキュ リティの強化に取り組みます。外部からNHK放送研修センターのイントラにア クセス可能なVPNシステムは、セキュリティが確保されていますが、ファイルサ ーバーのリスク対策としてフォルダ構成やアクセス権限について再検討を行いま す。また、未登録の外部記録媒体は接続できないようにするなどITインフラの管 理に努めます。職員、スタッフ1人1人の意識を高めるため、個人情報の取り扱い や、Teams や OneDrive などクラウドアプリの正しい使い方、研修実施時の注意点、 外部記録媒体の運用などについて、情報セキュリティ勉強会等を通じ、ITスキル の向上を図ります。
さらに、情報漏洩対策など、情報セキュリティに関する規程やルールを随時見直 すとともに、セキュリティの重要性とルールの順守などITリテラシーを、組織全 体に引き続き浸透させていきます。


5 内部監査・統制によるコンプライアンス意識の徹底

理事長を委員長とする「リスクマネジメント委員会」が中心となり、「リスクマ ネジメント規程」に基づいてリスクマネジメントを推進します。
コンプライアンスを徹底するため、年間を通じてコンプライアンス関連の研修・ 勉強会、eラーニングを実施すると共に、年に1回NHKと合わせて集中的に職場 討議を設けるなどして、役職員のコンプライアンス意識の向上に努めます。こうし た取り組みに加え、情報セキュリティの強化や、法令の改正等にあわせた財団の諸 規程の見直し、適正経理の推進など内部統制の充実・強化につながる施策を随時実 施します。
また、内部監査室は、財団の諸活動が、法令、財団諸規程および経営の基本方 針に即して、適正かつ効果的・効率的に実施されているかなど、客観的に評価・ 検討をしていきます。その評価・検討の結果については、適宜、組織全体に情報の 提供、提案等を行い、財団の使命達成および業務運営の改善に資することとしています。2022年度も年度監査計画を策定して定期監査を10月頃に実施すると もに、必要に応じて年間10回程度、不定期監査を行います。


組織・要員計画

当財団の要員計画は、次のとおりです。

年 度 2020年度 2021年度 2022年度 
要員数(役員を除く) 69人73人 61人 
(注)2021年度は年度末見込み、2022年度は計画値


財団について

財団の概要

定款

役員・評議員名簿

理事長略歴

経営計画(2021-2023年度)

2022年度事業計画

2022年度 収支予算書

正味財産増減計算書

貸借対照表

事業報告書