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朗読コンテスト

この朗読コンテストは、日本語センターが、NHK話しことば通信添削講座「最新朗読」の受講者を対象に、毎年2回行っています。

第58回 朗読コンテスト

 

「第五十八回朗読コンテスト」の入賞者が決まりました。

今回の課題文は、谷崎潤一郎著「春琴抄」。

優秀賞には7人が選ばれる

今回は、優秀賞に6人が選ばれました。 優良賞は17人、奨励賞は21人でした。

第58回 朗読コンテスト結果(五十音順、敬称略)

大賞

該当者なし

優秀賞 6名

  • 飯島 裕三(東京都)
  • 上野 トミ(新潟県)
  • 牛込 昌代(埼玉県)
  • 工藤 寿栄子(愛媛県)
  • 田中 隆子(北海道)
  • 六本木 正孝(群馬県)

優良賞 17名

  • 大岩 知恵子(愛知県)
  • 大原 道子(北海道)
  • 小貫 征子(北海道)
  • 片山 南美(和歌山県)
  • 加持 喜一郎(茨城県)
  • 小泉 まき子(千葉県)
  • 後藤 弘子(岩手県)
  • 小林 きく江(東京都)
  • 齊藤 幸子(岩手県)
  • 佐々木 久美子(北海道)
  • 白石 喜美子(愛媛県)
  • 髙須 真由美(岡山県)
  • 髙橋 三宜代(和歌山県)
  • 中村 トミ子(青森県)
  • 林 栄子(北海道)
  • 矢澤 陽子(長野県)
  • 矢田 禮(山口県)

奨励賞 21名

  • 池田 佐季(北海道)
  • 小川 雄峰(福岡県)
  • 奥山 順子(熊本県)
  • 柿元 晶子(大阪府)
  • 兼子 直美(静岡県)
  • 北山 聡美(京都府)
  • 北山 照子(和歌山県)
  • 古賀 君代(福岡県)
  • 笹川 尚子(東京都)
  • 白澤 真樹子(北海道)
  • 田中 明子(長野県)
  • 中西 由美子(和歌山県)
  • 中野 秀子(岩手県)
  • 中村 静子(東京都)
  • 西田 治子(北海道)
  • 藤田 理美子(兵庫県)
  • 古舘 富子(東京都)
  • 星野 桂子(茨城県)
  • 山田 富美江(福岡県)
  • 山本 美鈴(福島県)
  • 吉岡 幸子(岩手県)

第58回朗読コンテスト 受賞者の朗読

受賞者の朗読

*写真をクリックすると音声の一部をお聞きになれます 

飯島 裕三さん (東京都豊島区)

発声とテンポ、間に

神経を集中しました。


上野 トミさん (新潟県上越市)

繰り返し声に出し

何かが見えてきました。


牛込 昌代さん (埼玉県上尾市)

「音調の美」に苦労、受賞にびっくり。



工藤 寿栄子さん(愛媛県砥部町)

朗読の奥深さが

少しわかってきました。


田中 隆子さん(北海道札幌市)

独特な文体と

流れるような文章の一致に苦労。


六本木 正孝さん (群馬県前橋市)

句読点をつけたら読みやすく

リズムも生まれた。


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☆過去のコンテストの CD(第 48 回~第 56 回)も販売しております。ご希望の 方は、「NHK 放送研修センター 日本語センター」(03-3415-7121)までお電話ください。

選考を終えて

選考委員長 杉澤 陽太郎

 「それはまだ人々が「愚」と云う貴い徳を持っていて」という有名な出だしで始まる「刺青」が書かれたのが、明治43年(1911)、谷崎、24歳の時です。
 当時全盛の“旧時代の秩序を破って新しい自我を見つめよう”とする「自然主義文学」に対する、挑戦状とも言えるものでした。
 そして、この「春琴抄」が書かれたのが、昭和8年(1933)、谷崎47歳の時です。20年以上が経過しています。
 その間、谷崎の、古典に対する想いがいかに深かまって行ったか、「春琴抄」の翌々年、昭和10年から、膨大な「源氏物語」の口語訳に着手しているのでもわかります。
 そして最後には、「細雪」という、古典と現代が融合した、日本文学史上に燦然たる大輪の華を、現代人の私たちの前に咲かせて呉れました。

 では、谷崎は、古典の、何に、どこに、惹かれていたのでしょう。
 それは、テキストにも引用していますように、彼の「文章読本」の中の、
「現代の口語文に最も欠けているものは、目よりも耳に訴える効果、即ち音調の美であります。」
という言葉に尽きると思います。
 古典の持つ「音調の美」を、いかに現代文に生かすか、その一点に集中して、谷崎が精根込めて工夫を凝らしているのが、「春琴抄」だと言えるでしょう。

 では、私たちは、それを踏まえて、どう読んだらいいのか。
 今回の課題文を前に拡げて、つい考え込んでしまいます。
 まず句読点、これだけの長い文章に、句点は3、読点は5しかありません。とくに後半は13行の中に読点が一つあるだけです。
 そこで、一応、意味の切れ目に句読点を打ってみます。
 それに即して声に出してみますが、なんだかちっとも面白くありません。
 では谷崎は、どこにどう、句読点を打っているのだろうと改めて見てみると、出だしに集中しています。比較的短い文に句点二つ。問題はそのあと。
「・・云った。佐助、それはほんとうか、と春琴は一語を発し」と、読点が二つ使われています。
 あとで同じ言葉がもう一度出てきますが、「佐助それはほんとうかと云った短い一語」のように読点はありません。
 なぜここに、読点が二つも打たれているのか。
 この読点が、「音調の美」を指示する記号ではないのか。
たとえば、「・す・け・ ・れ・は・・ん・と・う・か」であったり、「さ・す・・ そ・れ・は・ほ・・と・う・」であったり、様々な組み合わせが考えられます。
 その度に、春琴の人物像が変り、佐助に対する態度や思いが変ってしまいます。
 改めて、この短い一語が、この作品の核であり、全てだということに気がつきます。
 ぜひこのあとも、ご自分の思い描く春琴像とその声に近付くために、この「短い一語」に、様々工夫をしてみてください。

 こうして、「音調の美」、「音調の美」、ということを意識して読んでいくうちに、この作品を構成する音調の決定的な要素に、人名があることに気がつきます。
 佐助、さ・す・け。
権助でも六助でもぴったりきません。
「さ」と「す」という二音の爽やかさが、この青年の心や姿を、鮮やかに浮き上がらせるからです。
 そして、何より、「春琴」です。
谷崎が目指したこの作品の主人公の名は、「春琴」以外あり得ないと思えてきます。
「しゅ・ん・き・ん」
「ん」という撥音は、昔から日本では嫌われます。漢詩、漢文で多用される音です。しかし、発音の仕方によっては、何かエキゾチックで知的な魅力があるのではないでしょうか。
「しゅ・・き・」と、「ん」に力が入っては絶対ダメで、
しゅ・ん・・ん」。
その時、「しゅ」もそうですが、特に「き」という音は、下を向いて発音すると、綺麗な音が出ません。
 顔を上げて、息を上顎部に、花火を上げるように、柔らかく共鳴させることが大事です。
 先日のリオ・オリンピックで、放送を聞いていると、金メダルなのか、銀メダルなのか、聞き分けられないのが、かなりありました。特に金メダルの、金(キン)という音が美しく響いてくれないのです。たぶん下を向いて話しているのだと思います。

「か行音」というのは、喉を詰めた発音になりやすいものです。
 ところが、ロジャー・パルバースさんは、美しい日本語の最高の例として、正岡子規の、
「柿食えば、鐘が鳴るなり、法隆寺」
を挙げています。
き」「えば」「ね」と「か行音」が三つも続き、
 うっかりすれば、重っ苦しく、濁ったものになるのを、どうやったら乗り越えられるか。

 改めて、世阿弥の「一調、二機、三声」の、息の使い方、リズムの取り方が、いかに大事かが、この「春琴抄」を読んでみて良く解りました。
「息を額から出せ」という、住太夫さんのことばも、成る程と更に実感が湧きます。

 その呼吸法は、古典だからではなく、現代文であろうと、
朗読が、「私が読むのを聞いて貰う」ではなく、「目の前にいるその人に語りかける」ものだとするならば、私たちは、長い語りの伝統の中に培われた先人たちの教えに耳を傾けなければなりません。

 パルバースさんに褒めて貰えるような、美しい日本語の声を出すにはどうしたらいいのか。
 繰り返し工夫し挑戦しているうちに、あなたは、きっと、素晴らしい声の持ち主になれると思います。
 「しゅ・ん・・ん」もお忘れなく。


第57回 朗読コンテスト結果(五十音順、敬称略)

大賞
該当者なし
優秀賞 7名
  • 飯島 裕三(東京都)
  • 上野 トミ(新潟県)
  • 蠣﨑 裕子(東京都)
  • 佐々木 照代(青森県)
  • 田中 隆子(北海道)
  • 吉冨 純子(広島県)
  • 六本木 正孝(群馬県)
優良賞 20名
  • 青柳 慶子(北海道)
  • 岩西 和子(和歌山県)
  • 大原 道子(北海道)
  • 小川 由理(福岡県)
  • 加持 喜一郎(茨城県)
  • 片畑 令子(和歌山県)
  • 片山 南美(和歌山県)
  • 加藤 靜子(愛媛県)
  • 小泉 まき子(千葉県)
  • 後藤 美佐枝(宮城県)
  • 齊藤 淳子(滋賀県)
  • 酒井 美智子(愛知県)
  • 下條 英子(福井県)
  • 野坂 昌子(福井県)
  • 長谷川 順子(北海道)
  • 半田 和世(静岡県)
  • 福田 邦子(栃木県)
  • 本村 郁子(熊本県)
  • 矢澤 陽子(長野県)
  • 安川 美保(北海道)
奨励賞 20名
  • 赤星 幸子(和歌山県)
  • 伊勢戸 雅子(滋賀県)
  • 岩瀬 真弓(北海道)
  • 岡本 昭子(広島県)
  • 北山 聡美(京都府)
  • 北山 照子(和歌山県)
  • 小林 洋子(埼玉県)
  • 櫻田 和子(山梨県)
  • 笹川 直子(兵庫県)
  • 佐々木 久美子(北海道)
  • 鈴川 克実(兵庫県)
  • 鈴木 みどり(愛媛県)
  • 鈴木 泰子(東京都)
  • 髙橋 三宜代(和歌山県)
  • 田中 明子(長野県)
  • 中川原 詳子(福岡県)
  • 西田 眞基子(熊本県)
  • 枡田 みち子(兵庫県)
  • 三木 三恵子(兵庫県)
  • 吉岡 幸子(岩手県)